ニュース概要
百貨店大手の高島屋とJ.フロントリテイリング(JFR)が発表した2025年3〜5月期決算で、
インバウンド消費の失速が明らかになりました。
高島屋の総額売上高は前年同期比5.7%減の2,412億円、
営業利益は26.9%減の126億円と大きく減益。
特に訪日外国人による免税売上高が前年から100億円減少し、
高額品は41%も落ち込みました。
JFRも同様で、免税売上高は24%減。
訪日客数は14%増えたものの、
客単価は33%減少するなど、消費単価の大幅な減退が響いています。
この状況を受け、高島屋は通期の免税売上目標を従来計画より280億円も下方修正しました。
なぜこのニュースが重要か?
百貨店におけるインバウンド消費は、近年の業績を支える最大の柱でした。
円安が追い風となり、ラグジュアリーブランドや高額商品への購買が増加していたものの、
円高への反転が購買意欲に大きく影響。
また、インバウンド客の消費マインドもコロナ後の「爆買い」型から
「体験型・節約型」へ変化しています。
このニュースは、単に為替だけでなく、
国際情勢、現地での価格比較、観光体験の多様化など
複数の要因がインバウンド消費を動かしていることを示しています。
見解とアクションポイント
インバウンド戦略を支援する立場として注視すべきは、
「購買単価が下がっても来訪者数は増えている」
という事実です。
つまり、単価に依存しない多様な購買動機への対応が必要になります。
- ラグジュアリー商品の一辺倒ではなく、中価格帯や体験消費、オリジナル商品を組み合わせる
- 免税手続きの簡易化・多言語対応を徹底し、購買心理的なハードルを下げる
- 「為替を理由に控える層」へのロイヤルティプログラムや限定特典を提案する
- 地方百貨店・商業施設との連携を強化し、都心偏重の集客から分散化を図る
これからは「数を伸ばせば売上も伸びる」という単純な構造ではなく、
一人あたりの満足度や、再来訪の動機づけが成長のカギとなるでしょう。
まとめ
インバウンド消費の急失速は、百貨店業界にとって逆風です。
しかし、訪日外国人の数は増え続けており、
文化・為替・消費スタイルの変化に応じた「新しい売り方」が求められています。
円安・円高に左右されにくいファン層の育成と、
体験価値の訴求がこれからの差別化のポイントになるでしょう。