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訪日中国人旅行客の回復とオーバーツーリズム問題

2023.10.17| タグ: ,


10月初旬、インバウンドセミナー参加の為に大阪へ向かう道中、グリーン車に乗り合わせた中国人親子の出立ちが目に留まった。
(僕はポイント利用)
夫婦は共に40歳前後、幼稚園児程の女の子が一人。リモアのスーツケースが二つ、そこにはANAの「PRIORITY」のオレンジタグが着いている。典型的な中国人富裕者層ファミリーである。

今は国慶節。
どうりで梅田界隈のホテルがコロナ禍対比5〜10倍もの高単価な上にどこも満室である訳だ。

つい2.3週間程前には例の処理水問題で「中国人訪日客はキャンセルが相次ぎ国慶節には大陸からのインバウンドは戻らないのでは?」とマスコミ各社がこぞって報道していた。
そのような報道の影響もあり、福岡で主催したインバウンドセミナーには、マスコミ、行政、自治体、多くの企業のご担当者様にご参加いただいたが、皆一様に国慶節に中国人インバウンドが訪れるのか?を心配していた。
そのセミナー内で私は
「団体旅行客の一部にはキャンセルが出ているものの、2019年には個人旅行客比率は7割以上であり、その大半は中国内のSNSより日本の正しい情報を収集しており、大きな影響はないに等しい」
とお伝えしていたが、実際に国慶節を迎え、日本各地の観光地が中国人旅行客で賑わう映像をニュースで目にし、まさにその心配は杞憂であったと確信をした。

大阪で宿泊したホテルのフロントスタッフに聞いてみたところ、宿泊客の8割が中国人だという返事が返ってきた。
9月の訪日客の××割は中国人だったとのデータがJNTOから発表されるとの情報も得ている。(執筆段階で公表されていないため数字は伏せています。)
実際にJNTOが発表する訪日客数を見ると、中国からの訪日客数は2023年に入り10月現在までで既に127万人が訪れていることがわかる。
この数は韓国、台湾に次ぎ、香港、米国の130万人とほぼ同等レベルの数字である。
中国人訪日客はもうそこまで回復してきているのだ。
さらに8月単月で見ると、36万4千人まで回復しており、この数字は、韓国に次いで2位の台湾とほぼ同水準である。
また、みずほリサーチや大和総研等のシンクタンクの発表では、中国人訪日客は2023年に400万人まで戻ってくると予測している。
その数は韓国に次ぐ数字となり、台湾香港米国を凌ぐ数となる。
それでも実際に日本に訪れた中国人は14億人のほんの数%程度。(2019年のピーク時でも訪日客数959万人と全人口のほんの0.7%に過ぎない)
さらに、このままこのペースでいけば来年2024年には2019年同様、間違いなく訪日客数、消費額共に中国がトップを占め、さらには2025年には2019年の過去最高を上塗りするであろう。
そしてこのペースは間違いなく当分の間は続くと断言できる。
なぜなら、コロナ禍以前の2018年頃より、中国人の海外旅行の行き先はタイを抜いて日本が一番の人気となったが、2023年現在も変わらず1位となっているからだ。
(ちなみにコロナ禍中に定期的に取られていたアンケートを見ても、中国人が行きたい旅行先の1位は常に日本となっていたのだから驚きだ。)
結局、こういった数字を俯瞰して見ると、日本のインバウンド政策は東アジア、隣国頼みにならざるを得ないのが実情なのである。

ではなぜ処理水問題があったにも関わらず、多くの中国人が日本へ訪れているのか?

この答えは訪日している中国人の層にある。
中国人は14億人もおり、日本人が思う以上に多様だ。
そのような多様な中国人の中で、今まさに日本旅行に来ている中国人は大多数がFITと呼ばれる富裕層だ。
富裕層の大半はツアーなどの団体旅行を利用せず、日頃から個人で家族だけで旅行を楽しんでいる。
彼らはSNSを通して正しい情報を収集できる人たちであり、自分たちなりに判断し、行動をする。
コロナ禍前の2019年頃も、日本でどこに行き、何を食べ、何を買うか、全て事前に情報収集をして計画を立てて旅行に来ていた。
彼らは今回、処理水のことを自らの力で調べ、問題ないと判断し、日本旅行へ訪れているのだ。
大阪へ向かう途中の新幹線で乗り合わせた中国人ファミリーの話に戻るが、幼稚園児ほどの歳の子どもがタブレットでアニメを観ていたが、子どもがボリュームを上げると、すぐに母親がそれを制し、子どもが騒げば「静かに」と諭していた。
そういったマナーを身につけていることも富裕層の特徴なのだが、その光景を目にしたときは、やはりなと納得した。
処理水の問題が加熱し始めた頃、中国人からの嫌がらせ電話が全国で相次いだというニュースを目にし、中国人はこれだからと呆れ、中国人に対して嫌な感情を抱いた人も大勢いるだろう。
しかし、実際に嫌がらせ電話を掛けた人々は、比較的内陸部の田舎の若者が中心だったと聞いている。
彼らは自分の境遇に不満があって、ただストレスを発散したかったり、嫌がらせ電話を掛ける動画をSNSに投稿して小銭稼ぎをしたりといったレベルの人々だ。
中国全体から見ればほんの一部の人たちなのである。
一方、日本に旅行へ来ることができる人々は、そうした若者とは異なる中間層かそれ以上の富裕層だ。
彼らが日本に旅行へ行くには、団体旅行、個人旅行ともにビザが必要となるのだが、ビザを取得して日本へ来ることができるような人々は少なくとも年収500万円以上はあるような人々だ。
このように、一口に同じ「中国人」といっても全然階層が違う人たちなのである。
彼らは中国国内にいても、知り合い同士ではなく、住んでいる場所も、学歴も、職業も全く異なるが、日本人には、同じ「中国人」に見えてしまうのだ。
このように、処理水の問題で中国政府の言い分を鵜呑みにする層はそもそもとして日本へ旅行に来ないような層であったから、処理水の影響で中国人旅行客が激減するだろうという報道とは裏腹に、この度の国慶節では多くの中国人旅行客が日本各地の観光地を賑わせたという結果になったわけである。

中国人旅行客が今後も順調に増加していくということが、この度の国慶節で裏づけられたようなものであるが、そうなると次の問題が起こってくる。
それが既に顕著になりつつあるオーバーツーリズム問題である。
このオーバーツーリズム問題を解決するためにはインバウンドの大多数を占めていくだろう中国人旅行客をいかに日本各地の地方部へ分散させることができるかが重要となってくる。

後編ではこのオーバーツーリズム問題についてやその解決策について詳述する。
後編近日公開予定。

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