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モノ消費からコト消費へ~訪日外国人旅行客の消費の変化~
2024.05.01| タグ: インバウンド
日本のインバウンド市場はコロナ禍からの影響を乗り越え、2023年訪日客の旅行消費額は約5.3兆と過去最高額、訪日客数は約2506万人でコロナ禍直前年である2019年の8割にまで回復しました。
さらに2024年に入ってからも、右肩上がりで訪日客数は増え続けており、いよいよ過去最高値を超える勢いとなっています。
日本への観光客数の増加・多様化とともに、彼らの旅行スタイルや消費傾向も変化がみられるようになり、特にモノ消費からコト消費への移行が顕著となってきています。
これにより企業や観光地は、これまでの戦略を転換する必要に迫られることになってくるでしょう。
モノ消費・コト消費とは
モノ消費は、物理的な製品や商品の購入や所有を通じて満足や価値を得る消費形態です。
一方でコト消費とは、体験やイベントに焦点を当てた消費形態であり、思い出や感動を通じて満足や価値を得る消費形態です。
モノ消費からコト消費への変化
過去、インバウンドの主な消費はモノに対するものでした。
特に中国人インバウンドによる「爆買い」が印象に残っているかと思います。
当時、中国人インバウンドが、日本製の化粧品、家電、ファッション商品、ブランド品などを大量に購入し、日本の小売業界に思いもよらぬ好景気をもたらしました。
爆買いは、日本製品の安全性や品質の高さが、中国をはじめとした海外の人々から評価されたことが大きな理由で、当時のインバウンドの消費全体を強く牽引しました。
しかし、この「モノ消費」中心の時代は、インバウンドの消費行動の多様化とともに徐々に変化の兆しを見せ始めます。
単なる商品の購入だけではなく、日本独自の文化や風土を深く体験したい、他の人が体験したことがないようなものを体験したいという欲求が強まってきたのです。
その結果、彼らの旅行スタイルはモノ消費からコト消費へと移り変わりはじめました。
コト消費の魅力
コト消費では、日本の文化や伝統の体験、豊かな自然や四季、アクティビティを楽しむことが主な内容となります。
例えば、着物をレンタルしての街歩きや、和菓子作り体験、茶道や日本の伝統芸能(能や歌舞伎など)の鑑賞、高級旅館での宿泊や温泉巡り、伝統的なお祭りへの参加、桜の鑑賞や国立公園の散策などが挙げられます。
そして彼らは日本の魅力をより深く理解し、その魅力を自国や他の人々に共有し時に自慢し、新たなファンを増やす働きをしてくれます。
また、コト消費は、地域経済に直接的に寄与するものが多く、地域の観光資源や文化財の保護、活性化にもつながります。
移行の背景
モノ消費からコト消費への移行にはいくつかの背景があります。
① 情報社会の発展
インターネットやSNSの普及により、海外からでも日本の情報をより簡単に入手できるようになり、日本国内での行き先はもちろん、過ごし方の選択肢を増やせるようになりました。
② 経験や時間の使い方に対する価値感の変化
各国の経済発展や近代化に伴い、物のように形として残るものだけでなく、より充実した体験や、他の人々がまだ体験したことのないような希少な体験といったものにも価値を感じるようになってきました。
③ 他国の文化や風土に対する興味関心の高まり
海外のコンテンツや文化に日ごろから気軽に目にして触れ合える環境が整い、旅行先の地域の文化や風土をより深く理解しようとする意識が高まりました。
このような背景からモノ消費からコト消費への移行が急速に進みました。
まとめ
訪日外国人観光客のモノ消費からコト消費への移行は、日本での旅の新たな潮流と言えます。
彼らの旅行スタイルが体験重視によりシフトすることで、地域経済や文化の振興にも良い影響が期待されます。
ただ反面、コト消費への移行が進めば進むほど、メーカーや小売りなどモノ消費を主力とした事業者にとっては、売り上げが落ちる要因が大きくなっていくとも言えます。
まだ現時点ではモノ消費も大きな勢いがあるとも言えますが、今後1、2年で大きく状況が変わってくるでしょう。
その為、コト消費につながるような商品造成をいかにおこなっていくか、もしくはプロモーションなどを通してモノの魅力をいかに器用に、これまでと違った見せ方(魅せ方)で伝えていくか、そういった戦略を今まさに考え始めるべきでしょう。
(武内 大)