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中華圏インバウンドの訪日最新動向
2023年、インバウンドの旅行消費額が過去最高額となり、2024年に入ってからもその勢いは留まるところを知りません。
テレビでも連日訪日旅行客によるにぎわいが映し出され、インバウンドの盛り上がりを身近に感じている方も多いのではないでしょうか。
ですが、インバウンドって実際どういった影響力があるのかや、どこの国のインバウンドが一番影響力を持っているのかといったことは案外知る機会がありません。
今回は、インバウンドに関するいくつかの数値とともに、その現状と展望について考察してみたいと思います。
「欧米豪」と「中華圏」とは?
「欧米豪」と「中華圏」は、インバウンド事業において頻繁に耳にする地域です。
「欧米豪」はアメリカ、オーストラリア、イギリス、フランスの4つの地域を指し、「中華圏」は中国語が主要な公用語となっている中国、香港、台湾、マカオの地域を指します。
欧米豪は国の推奨もあり、多くの自治体や企業がターゲットとしています。
そして、一方の中華圏も訪日客数や消費額が多いため、結果的に多くの自治体や企業がターゲットとする地域となっています。
ここで一つの数値を見てみましょう。
以下は実際の訪日客数と消費額の割合です。
▼訪日客数が過去最高だった2019年
客数:欧米豪 9%、中華圏 52%
消費額:欧米豪 13%、中華圏 55%
▼2024年1月〜3月
客数:欧米豪 11%、中華圏 33%
消費額:欧米豪 18%、中華圏 43%
ALPS処理水の影響により中国の戻りが出遅れましたが、24年2月にはコロナ禍以降、初めて客数と消費額の両方で1位に返り咲いています。
中華圏インバウンドの現状
2023年3月31日に、6年ぶりとなる観光立国推進基本計画第4次基本計画(2023~25年度の3か年対象)が閣議決定されました。
2007年より施行されている観光立国推進基本計画ですが、その効果が初めて現れたのは2013年で、初めて訪日客数が1,000万人を突破しました。
その後、コロナ禍に突入する直前の2019年までは右肩上がりで、2019年には年間約3,200万人、約4.8兆円の消費額を記録しました。
前述の通り、2019年ピーク時の訪日客数と消費額の過半数を支えたのが中華圏インバウンドで、隣国である韓国を含めるとシェアは7割を超える規模となりました。
片道10時間以上を要する欧米豪と比べ、2~3時間で来れる物理的なアドバンテージを活かした結果です。
ここ10年で急増した中華圏インバウンドの今
中華圏からの訪日客が増え始めたのは2014年頃からで、中華圏インバウンドは14年から19年まで約3.7倍に増加しました。
この6年間でトレンドは大きく変化しており、その変化についてまとめてみました。
まず、中華圏訪日客で注目すべきは、団体旅行客と個人旅行客の比率です。
団体個人旅行を問わず、日本に来れる中国人は一定額以上の収入がないとビザが発給されません。
そのため、日本に来ている層は一定以上の収入がある客層となります。
ビザが発給される所得基準は個人旅行客の方が高く設定されているため、観光消費額も個人旅行客の方が多くなります。
14年当初は圧倒的に団体旅行が多かったですが、2019年にはその比率が逆転し、個人旅行が多くなりました。
団体旅行は主に初めて日本を訪れる方、個人旅行はリピーターが多い傾向があります。
また、沿岸部の大都市圏(北京、上海、広州、深圳)では個人旅行が、内陸部の大都市圏(成都、鄭州、武漢、西安、重慶)では団体旅行から個人旅行が増え始めています。
この傾向は、バブル期に日本人がハワイを訪れ、観光弊害を引き起こした時期と類似しており、中国も個人旅行客が年々洗練されていることがわかります。
コロナ禍以後のインバウンドの回復
2018年:3,119万人
2019年:3,188万人
2020年:411万人
2021年:24万人
2022年:383万人
2023年:2,506万人
2024年:855万人(1月〜3月)
23年にはタイやベトナムを皮切りに訪日客が戻り始め、一番遅かった中国も8月には個人旅行客のビザの発給が再開されました。
しかし、その直後にALPS処理水問題が勃発し、期待されていた国慶節に影響が出ました。
24年、ALPS処理水問題も鎮静化してきた中国が復活し、1〜3月は過去最高だった2019年を上回る滑り出しとなりました。
各国の19年対比での増加傾向もあり、唯一遅れていた中国も19年対比で64%の回復を示しました。
また、1〜3月の消費額においては、2位の台湾を1千億円以上上回る圧倒的な1位となりました。
今後の展望
24年は訪日客数と消費額が共に過去最高を記録する勢いです。
この背景で、京都や大阪などの主要観光地ではオーバーツーリズムによる観光弊害が話題となっています。
今後、さらに訪日客を呼び込むためには、東京、京都、大阪に頼らずに新たな「プラチナルート」を開拓する必要があります。
日本の地方にはまだインバウンドには知られていない魅力的な観光地がたくさんありますので、それらの地域の魅力を訪日客に伝えることが、観光立国をさらに確立するために不可欠です。
訪日客は多様であり、国や滞在時間、消費額、趣味嗜好によってニーズが異なります。
その多様なニーズに応えるためには、効果的なプラチナルートを設定し、訪日客に紹介することが重要です。
これによって、日本全国にインバウンドを広げ、観光立国の実現に貢献することが私たち観光業の使命だと感じています。
次回以降は、「プラチナルートの作り方」と「ターゲットの見極め方」についてお伝えしていきますので、お楽しみにしてください。
(武内 大)