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【ニュース解説】金乃竹、インバウンド宿泊客向け「握りずし体験」プラン開始
2025.07.28| タグ: インバウンド集客, コト消費, リョカンス, 体験型観光, 寿司体験, 文化体験プログラム, 日本ファン創出, 社内副業制度, 箱根観光, 訪日外国人消費, 連泊促進
神奈川県箱根町で旅館5施設と飲食店3店舗を運営する株式会社金乃竹が、8月1日からインバウンド宿泊客向けの文化体験プログラム「Ryocance(リョカンス)」の一環として、新たに「握りずし体験」プランの提供を開始するとのニュースがありました。このプランは社内副業制度を通じて社員が企画したもので、宿泊客が自らすしを握り、日本の食文化を体験できる内容となっているそう。

社内副業制度は、社員が得意分野を生かした企画を立案し、報酬の一部が本人に還元される仕組みです。今回の「握りずし体験」も、サービススタッフと調理スタッフが協力して立ち上げました。調理の実現性と体験価値の両立を目指し、都内の人気寿司店の動向調査や試作を重ねて内容を構築したといいます。
参加者は、酢飯作りやワサビすりの工程から体験し、完成したすしは客室でゆっくり味わえます。料金は1人5,000円、所要時間は約1時間で、今後は地元の名産品「小田原ちょうちん」の製作体験など、地域性を生かしたプランの展開も検討しているとのことです。
【なぜ重要か】訪日外国人の「体験型消費」ニーズに応える先進事例
この取り組みが注目される理由は、変化するインバウンド市場のニーズを的確に捉えている点にあります。2025年の最新データによると、訪日外国人観光客の消費行動は「モノ消費」から「コト消費」へとシフトし、さらに進化しています。特に欧米からの観光客を中心に、単なる観光地巡りではなく、日本文化の本質を体験したいというニーズが高まっています。
金乃竹リゾートのインバウンド利用状況を見ると、利用客の約37.5%が欧米人で、特にアメリカからの富裕層観光客の割合が高いことが特徴です。こうした観光客は、日本の「非日常空間」や「和のアクティビティ」に高い価値を見出しており、今回の「握りずし体験」プランはこのニーズに応える形となっています。

農林中央金庫が訪日観光客に行ったアンケートでも、「滞在時に食べた日本の料理」という質問に約7割の人が「寿司」と回答しており、寿司は日本食の代表として高い人気を誇っています。しかし、単に「食べる」体験だけでなく、「作る」プロセスを体験することで、日本の食文化への理解と愛着が深まり、より質の高いインバウンド体験を提供できることが期待されています。
【見解】文化体験を通じた「日本ファン」づくりが持続的インバウンド戦略の鍵
日本政府観光局(JNTO)によると、2025年上半期(1~6月)の訪日外国人は過去最速で2,000万人を突破し、インバウンド消費額も上半期で4.8兆円と過去最高を記録しています。しかし、一過性の「日本ブーム」に依存しない持続的なインバウンド戦略の構築が今後の課題となっています。
その点で注目すべきは、金乃竹の「Ryocance(リョカンス)」というコンセプトです。これは「旅館(Ryokan)×バカンス(Vacance)」を組み合わせた造語で、長期滞在を前提に、日本文化をより深く体験してもらうプログラムです。2024年1月から導入され、茶道、着付け、よさこい踊り体験などを提供してきました。


企業や自治体のインバウンド集客担当者にとって示唆に富むのは、このような文化体験プログラムが単なる一時的な満足度だけでなく、「日本ファン」の育成につながる点です。本物の日本文化に触れ、その背景や意味を理解することで、訪日外国人のリピート率向上やSNSを通じた口コミ効果が期待できます。
また、社内副業制度を活用して社員の知識や技能を生かした新しい体験コンテンツを創出する仕組みは、人材活用と収益創出の両面でメリットがあります。アイドルタイム(10:30~13:00などの隙間時間)の有効活用によるスタッフの副収入確保は、観光産業における新たな雇用モデルとしても注目されます。
【まとめ】持続的なインバウンド消費を支える「文化体験」の価値向上を
金乃竹の「握りずし体験」プランは、単なるサービス拡充に留まらず、インバウンド観光の本質的な課題に応える取り組みとして評価できます。訪日リピーターの創出、滞在時間の延長、地域性を生かした体験の提供など、今後のインバウンド戦略において重要な要素が凝縮されています。
企業や自治体のインバウンド集客担当者は、以下の点に着目すべきでしょう:
- 文化体験の深化:単に日本文化を表面的に紹介するだけでなく、「自ら作る」「体感する」などの参加型要素を取り入れ、より深い文化理解を促す
- 従業員の知識活用:社内人材の専門知識やスキルを観光資源として活用し、オリジナルの体験コンテンツを創出する
- 長期滞在の促進:複数の文化体験プログラムを組み合わせ、訪日外国人の滞在日数の延長を図る
- 地域資源の活用:地元の伝統工芸や食文化など、その地域ならではの体験を提供し差別化を図る
今後のインバウンド市場において、一時的な「日本ブーム」に頼らない安定的な外国人観光客の獲得のためには、日本文化への深い理解と愛着を育む体験型コンテンツの充実が鍵となります。金乃竹の取り組みは、その先進事例として多くの示唆を与えてくれるでしょう。
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