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【ニュース解説】65.2%が「嬉しくない」インバウンド過去最高更新の裏にある複雑な現実-観光摩擦解消と持続可能な受け入れ体制構築への道筋-
2025.08.12| タグ: インバウンド, オーバーツーリズム, 企業戦略, 地方創生, 持続可能な観光, 自治体, 観光摩擦, 観光政策, 観光立国, 訪日外国人
2025年インバウンド最新データ
2025年、日本のインバウンド市場は空前の活況を呈している。2024年に3,686万人という過去最高を記録し、2025年上半期だけで2,151万8,100人に達するなど、コロナ禍からの完全復活を果たした。関西万博の開催効果も相まって、観光庁発表の4-6月期旅行消費額は2兆5,250億円(前年同期比18%増)という四半期最高記録を更新している。
しかし、深刻な課題が浮上
マーケティング支援会社oneの調査によると、日本人の65.2%が「インバウンド増加は嬉しくない」と回答。経済効果への期待と生活者の実感との間に大きな乖離が生まれている。
主要な不安要因(複数回答)

なぜ重要か:持続可能な観光立国への転換点
制度設計の限界露呈
京都市バスの満席常態化など、生活インフラへの圧迫が深刻化。観光バス分離運用の試みも制度制約と収益モデル分断により実効性に乏しい状況が続いている。
若年層の交流志向拡大
10-20代では「日常的な場所への関心」が40.2%(全体29.5%)、「現地人との交流志向」が22.1%(全体11.9%)と高く、観光の質的転換が進んでいる。
経済効果vs生活への影響のバランス課題
📈 経済的プラス効果
- 1人当たり平均消費額:21万円
- 全体消費額:5兆円(GDP約1%相当)
- 地域経済活性化期待:35.7%
- 雇用増加期待:18.9%
📉 生活への圧迫要因
- マナー悪化懸念:65.0%
- 治安悪化懸念:55.7%
- 混雑問題:49.7%
- 物価上昇・居住環境変化
この調査結果は、単なる感情論ではなく、観光政策の根本的な見直しが必要であることを示している。量的拡大から質的向上、そして持続可能性を重視した観光受け入れ体制への転換が急務となっている。
見解:観光摩擦解消への実践的アプローチ
企業・自治体が今すぐ実行できる3つの解決策
1. 都市交通の需要分散
- 観光客専用シャトルバスの独立運用
- 利用時間帯制限の導入
- 目的別交通サービスの分離
- 参考事例:ノルウェー・オスロ市の交通分離方式
2. 観光ルール共通化・発信強化
- ピクトグラムによる視覚的案内
- AR(拡張現実)ナビゲーション導入
- 簡易多言語ガイドの整備
- 自治体・民間事業者連携体制構築
3. 観光課税活用による地域配分見直し
- 宿泊税・入域税の戦略的導入
- 公共サービス・生活インフラへの還元
- 透明かつ公平な税収配分
- 参考事例:スペイン・バルセロナの地域投資モデル
観光が日常価値再発見の契機に
調査では「観光立国に誇りを持つ」と答えた人が52.7%に達している。これは観光が単なる経済活動を超え、日本人自身が日常の価値を外部視点から見直す重要な契機となっていることを示している。
「インバウンドにマナーを求める前に、都市・交通・生活のあり方を再設計する必要がある。本質的な課題は、受け入れる準備不足にある。」
– キャリコット美由紀(観光経済ライター)
まとめ:持続可能な観光立国への転換点
企業・自治体担当者への提言
65.2%の「嬉しくない」は感情論ではなく、制度設計の課題を示すデータとして受け止める
単純な誘客数増加ではなく、地域との共生を重視した受け入れ体制構築を優先
観光事業者・自治体・住民の三者が利益を共有できる仕組みづくりが不可欠
今後の行動計画
- 短期(3-6ヶ月):現行の観光客受け入れ体制の課題洗い出しと優先順位設定
- 中期(6ヶ月-1年):交通分散・ルール共有・課税制度の具体的導入検討
- 長期(1-2年):地域住民との対話を重視した持続可能な観光モデル構築
インバウンド再拡大は日本にとって大きなチャンスですが、
同時に「観光と生活の調和」という新たな課題に直面しています。
今こそ、持続可能で包摂的な観光立国への転換を実現する時です。
出典・参考情報
