Company BlogBeAの日常やメンバーの思い

HOME / ブログ / Company Blog / 【続報】訪日中国市場に関する最新見解

【続報】訪日中国市場に関する最新見解

2025.12.11|

11月時点で「影響は限定的」と分析していた訪日中国市場ですが、12月に入り状況が急変しました。
航空会社による欠航・運休措置が「短期的な様子見」から「シーズン単位での抑制」へと長期化し、市場心理も大きく変化しています。

本分析は、急速に変化する市場環境を受け、インバウンド事業者の皆さまに正確な現状認識と戦略の再構築を促すことを目的としています。

■ 1. 結論:「様子見」から「確定的な需要減」へ局面転換
11月時点では「12月は静観し、春節需要に備えるべき」と判断していました。
しかし12月以降、航空会社による運休措置の長期化と市場心理の顕著な変化により、局面は明確に転換しました。

【予測の変化】2025年12月~2026年3月

当初予測:350万~380万人
現在予測:140万~160万人
変化幅:約▲60%
この水準は、同期間に想定される
・台湾:約200万人
・米国・香港:合計約100万人
の中間的な市場規模に位置します。

インバウンド事業者は、当初想定を基準にしたプロモーション配分の更新が必要な局面に入っています。

■ 2. 需要を押し下げる「3つの壁」
今回の大幅下方修正の背景には、需要を物理的・心理的に抑制する3つの要因があります。

【壁①】供給の壁:フライトキャパシティ不足

主要航空会社の欠航・運休により、供給座席数が30~40%減少。
物理的に「市場キャパが6割」に制限されており、需要以前に”来られない”状況です。

【壁②】心理の壁:自粛・ボイコット

2012年の尖閣問題では前年比▲40~50%減を経験しましたが、今回はSNS拡散により、本来旅行意欲が高いFIT層でも自粛が起こりやすい環境にあります。

【壁③】価格の壁:航空券の高騰

減便により座席が希少化し、日系・第三国経由便が高止まり。
中間層は韓国・東南アジアへ振り替わり、訪日継続者は”高単価層”へシフトしています。

■ 3. 市場の最新動向:「春節需要は蒸発に近い」
【運休措置が「シーズン単位」へ】

中国国際航空・中国東方航空・中国南方航空などが、日本行き全額返金・変更無料措置を2026年3月まで延長。
これは事実上、春節需要を当局が実質抑制していると解釈できます。

【12月だけで40万席以上が消滅】

欠航本数:約1,900便(計画比▲40%)
消滅座席:40万席以上
【地方路線が特に深刻】

北海道:北京大興-札幌、西安-札幌など完全運休
関西:長沙・重慶・西安・天津・南京が5060%欠航運休
その他:杭州-大阪、南京-神戸、岡山・高松線など撤退
Loong Airは日本全路線から撤退
地方インバウンドにとっては、需要蒸発に近い打撃となっています。

■ 4. 過去事例からの予測:長期的には市場は消失しない
2012~2013年の尖閣問題時も、4ヶ月間は大幅減少したものの、5ヶ月目以降は復調し、年間では前年対比▲8%に着地しました。
短期の需要減は発生するが、長期的に市場が消失するわけではないことが確認されています。

■ 5. 弊社の戦略見解:「エリア統合型施策」が最適解
当社は、台湾・中国・香港を束ねた「エリア統合型インバウンド施策」を継続することが最適と判断します。

【理由①】市場規模

同期間の総訪日数は
韓国 > 台湾 > 中国 > 香港・米国
と見込まれ、中国は6割減であっても一定規模を維持(2025年比でも100%以上)します。

【理由②】支出単価

中国人旅行者は韓国・台湾・香港より支出単価が高く、特に今期は

減便による座席不足
航空券価格の高止まり
情勢を踏まえたうえでの渡航判断
が前提となるため、訪日する層がハイエンド寄りにシフトしやすい構造です。

よって、訪日数が減っても、平均消費単価の上昇により事業者ROIが向上する可能性は十分にあります。

■ 6. 2026年4月以降の見通し
最大要因は夏ダイヤ以降の増便量であり、現時点での定量推測は困難です。
情勢・航空キャパを注視しながら、随時判断が必要な局面です。

■ 7. 今おこなうべきこと(重要)
【×】中国プロモーションを”ゼロ化”しない

訪日数は減りますが、来訪層は高単価。ROIは成立余地があります。

【×】春節需要に依存しない

2026年3月まで需要回復は期待できません。

【○】台湾・香港と一本化した施策が最適

メッセージ/クリエイティブ統一
運用コスト削減
KOL/KOC活用は維持

【まとめ】
訪日中国市場は「数が減り、質が上がる」構造へシフトしています。
エリア統合(台湾・香港・中国)施策が最も合理的であり、商業施設・自治体はターゲット配分の更新が必要な局面にあります。

短期的な需要減は避けられませんが、中国市場が長期的に消失するわけではありません。
むしろ今こそ、高単価層へのアプローチを強化し、質の高い受入態勢を整える好機と捉えるべきです。

【弊社代表コメント】
「11月時点では”影響は限定的”と判断していましたが、12月以降の航空会社の動きと市場心理の変化は予想を上回るものでした。
しかし、この状況は”中国市場の終焉”ではなく、”市場構造の変化”として捉えるべきです。
訪日数は減りますが、来訪する層は確実に高単価化します。台湾・香港と統合した戦略的アプローチこそが、この局面を乗り越える鍵だと確信しています。」

代表取締役 武内 大

前へ
次へ