Company BlogBeAの日常やメンバーの思い
【ニュース解説】関西万博活用戦略-西のゴールデンルートが切り拓く地方インバウンド誘客の新潮流-
2025.08.14| タグ: 19自治体, インバウンド誘客, コンシェルジュ型接客, 万博マーケティング, 地方創生, 広域連携, 自治体連携, 西のゴールデンルート, 観光プロモーション, 関西万博
ニュース概要
岡山市と高松市など西日本・九州の19自治体が、大阪・関西万博において8月27日から31日まで「ディスカバー・アンノウンジャパン(Discover Unknown Japan.)」と題した大規模プロモーションを展開する。
このプロモーションは2024年に福岡市が中心となって始めた取り組みの一環で、万博来場外国人に対して従来の「東海道ゴールデンルート」に対する「西のゴールデンルート」を巡る旅を提案する画期的な取り組みである。
プロモーション実施概要
開催期間
2025年8月27日~31日(5日間)
会場
EXPOメッセ会場「WASSE」
参加自治体
西日本・九州19自治体
注目の取り組み内容
来場者ニーズを聞きながらコースをガイドする「コンシェルジュブース」設置
万博会場から短期間で周遊できる観光ルートの個別提案
来場者が最も気に入ったルートを掲載した「絵巻物ガイドマップ」プレゼント
初日(27日)の縁日イベント開催による集客強化
なぜ重要か
関西万博の来場予定者約2,820万人のうち、約350万人がインバウンド客と想定されている。この巨大な集客力を活用し、従来の東京-大阪中心の観光ルートから西日本・九州エリアへの誘客転換を図る取り組みとして、極めて戦略的価値が高い。
市場機会の重要性
関西万博はコロナ後の世界最大規模イベントとして位置づけられ、インバウンド回復期における絶好のプロモーション機会を提供している。
特に欧米豪市場や高付加価値旅行者層への直接アプローチが可能な貴重な機会である。
広域連携の必要性
官民一体29団体(自治体、DMO、JR3社、ANA、JAL等)による連携体制は、単独自治体では実現困難なスケールメリットを創出。
限られた予算とリソースを効率的に活用する新しいプロモーションモデルとして注目される。
従来手法との決定的差異
従来の課題
地方自治体の個別プロモーションでは認知度・訴求力に限界があり、インバウンド客の大部分が首都圏・関西圏に集中する「オーバーツーリズム」と地方部の「アンダーツーリズム」の二極化が進行。
新手法の優位性
「西のゴールデンルート」として統一ブランド化することで、個別地域の魅力を相互補完し、周遊型の高付加価値旅行商品として訴求力を大幅向上。
見解
コンシェルジュ型接客モデルの戦略的価値
今回導入されたコンシェルジュブースは、単なる情報提供を超えた「カスタマイズ型旅行提案」を実現している。これは従来の画一的なパンフレット配布型プロモーションから、個別ニーズに応じたソリューション提供型への進化を示す重要な転換点である。
高付加価値旅行者獲得への効果
旅行者の潜在ニーズを引き出し、より長期滞在・高消費を促進
一般的な観光地ではない「隠れた魅力」への誘客を実現
リピーター創出と口コミ効果による持続的集客基盤構築
特に「絵巻物ガイドマップ」は、デジタル時代において敢えてアナログ的手法を採用することで、記念品価値と実用性を両立させた秀逸なアイデアである。
広域連携モデルの可能性
今回の19自治体連携は、地方創生とインバウンド誘客を同時実現する新しいモデルケースとして位置づけられる。
従来の縦割り行政の枠組みを超え、観光資源の相互補完により、単独では困難だった国際競争力のある観光圏形成を実現している。
万博後の持続性課題
一過性のイベント効果に終わらせず、恒常的な誘客システムへの発展が重要な課題である。
官民連携体制の制度化と、デジタルプラットフォームの構築による継続的プロモーション基盤の確立が求められる。
企業・自治体が考えるべきこと
連携戦略
単独限界を連携で克服
接客高度化
コンシェルジュ型対応
持続性重視
一過性回避の仕組み
高付加価値
質重視の誘客転換
まとめ
関西万博における「西のゴールデンルート」プロモーションは、単なる観光PRを超えた戦略的インバウンド誘客モデルとして、企業・自治体が学ぶべき重要な示唆を多数含んでいる。
実践すべき3つの戦略転換
1
個別から連携へ
限られた予算・人的リソースを最大活用するため、競合ではなく共創の発想で広域連携を推進する。
具体的アクション:近隣自治体・企業との観光資源相互補完協定締結、共同プロモーション予算の設定
2
画一から個別対応へ
コンシェルジュ型接客による旅行者ニーズの個別把握と、それに応じたカスタマイズ提案の仕組み構築。
具体的アクション:観光案内所のコンシェルジュ機能強化、多言語対応スタッフの配置・研修
3
短期から持続へ
イベント効果を一過性で終わらせず、継続的な誘客システムとして制度化・デジタル化を推進。
具体的アクション:デジタルプラットフォーム構築、官民連携協定の長期化、効果測定指標の設定
次世代インバウンド戦略への転換点
今回の取り組みは、大型イベントを活用した戦略的地方誘客の成功事例として、今後のインバウンド政策・企業戦略の重要な参考モデルとなる可能性が高い。
企業・自治体のインバウンド担当者は、この機会を単なる「成功事例」として見るのではなく、自組織への具体的適用可能性を検討し、実践に移すことが求められる。
